妊娠が判明すると、産婦人科や助産院で定期的に妊婦健診(検診)を受けるようになります。初産婦さんだと、「どれくらいのペースで、どんなことをするのかな?」と知らないことも多いのではないでしょうか。
今回は妊娠したときに知っておきたい妊婦健診(検診)の目的や頻度・回数、内容、費用についてご説明します。
妊婦健診(検診)の目的とは?
妊婦健診とは、妊婦さんや赤ちゃんの健康状態を定期的に確認するために行われます。
妊婦健診には以下のような目的があり、きちんと受けることで安全な出産につながります(※1)。
- 妊娠に伴う心身の変化に適応できているか、母体の健康状態を確認する
- 胎児が元気に成長しているか、異常がないか確認する
- 子宮収縮や子宮口の状態から分娩時期を予想する
- 妊娠中に発症しやすい合併症の予防
- どのような方法で分娩するのか決める
- リスクの高い妊娠を早期に発見する
- 妊婦さんが抱えている不安や悩みの相談にのる
- 妊娠中の過ごし方についてアドバイスする
妊婦健診(検診)の頻度や回数は?
厚生労働省は妊婦健診の標準的な回数を14回として、次のようなスケジュール例を示しています(※2)。
- 妊娠初期~23週:合計4回(4週間に1回)
- 妊娠24~35週:合計6回(2週間に1回)
- 妊娠36週~出産:合計4回(1週間に1回)
これはあくまで一つの目安であり、病院によっては妊娠23週目まで2週間に1回の頻度だったり、初産かどうかや妊娠した年齢などによって頻度が変わったりすることがあります。
詳しくはかかりつけの病院に確認するようにしてくださいね。
妊婦健診(検診)の内容は?
妊婦健診ではいつも同じ検査をするというわけではなく、時期や健康状態によって検査内容は変わってきます。一般的な妊婦健診の内容は次の通りです(※2)。
毎回行う検査
問診
体調や妊娠経過について医師から質問されます。妊娠中の体重管理について、アドバイスをもらうこともあります。
妊娠に関することで疑問や心配があるときは、問診時に相談してみましょう。
尿検査
尿中に尿たんぱくや尿糖が出ているかを検査して、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの病気のリスクがないかを確認します。
体重測定
妊娠中に体重が増えるのは自然なことですが、赤ちゃんとママの体のために順調に増えることが大切です。妊娠中の増え方に問題がないか確認するため、妊婦健診では毎回体重測定があります。
妊娠中の理想的な体重増加量の目安は以下のとおりです(※3)。参考にしてみてくださいね。
血圧測定
血圧を測定して、正常な範囲内にあるかを調べます。
妊婦さんの約20人に1人が「妊娠高血圧症候群」と呼ばれる高血圧が起こる可能性があります(※4)。命にかかわる可能性があるため、早期発見のためにも毎回血圧がチェックされます。
外診
妊婦さんのお腹を触って、おなかの張り(子宮の固さ)や赤ちゃんの位置や向きなどを調べます。
浮腫検査
妊娠高血圧症候群などではむくみ(浮腫)がみられることがあるため、妊婦さんの足のすねを押してへこみ具合を確認します(※5)。
時期に応じて行われる検査
超音波検査
超音波検査では、胎嚢や胎盤の位置、羊水の量、赤ちゃんの発育状態を確認します。
標準的には初期に2回、中期に1回、後期に1回行われますが、毎回行う病院も多いようです。
内診
腟のなかに指を入れて、子宮の状態をみます。妊娠初期は子宮のサイズや位置、硬さを、出産予定日の近くになると子宮口がどのくらい開いているかなどを確認します。
血液検査
血液検査では血糖や貧血、血液型、B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV抗体、成人T細胞白血病(HTLV)抗体、不規則性抗体、風疹ウイルス抗体、トキソプラズマ抗体などを調べて、妊婦さんや赤ちゃんが健康な状態なのかや、病気になっていないかをチェックします。
一般的には初期・中期・後期で各1回ずつ行われます。
子宮頸がん検診
妊娠初期に行われる子宮頸がん検診は、ヘラやブラシで子宮頸部の粘膜を軽くこすり細胞を採取して、がん細胞や異形成の有無をチェックします。
子宮頸がんや前がん病変にかかっていたとしても妊娠を継続できる可能性はありますが、放置しておくと母体の命が危険にさらされることもあるため、できるだけ早めに発見して対処することが肝心です(※6)。
クラミジア検査
クラミジアとは、性器クラミジア感染症を引き起こす細菌のことです。腟内に綿棒のようなものを入れて子宮頸管の表皮細胞を取り出すクラミジア検査は、必要に応じて妊娠30週までに行われ、クラミジア感染の有無を調べます(※3)。
クラミジアが進行すると、絨毛膜羊膜炎や子宮頸管炎が起こったり、最悪の場合流産や早産に至ったりするリスクが生じます。
また、出産時に赤ちゃんが感染して、結膜炎や肺炎を引き起こす恐れもあるので、早期に発見して治療してもらいましょう(※6)。
腹囲測定
一般的に妊娠4ヶ月以降になると、毎回腹囲検査が行われるようになります。
妊婦さんの体重増加具合や赤ちゃんの成長度をチェックするため、メジャーでお腹の周りを測定します。
子宮底長測定
一般的に妊娠中期以降になると子宮底長が測られるようになります。
子宮底長とは恥骨の上から子宮の一番上までの長さで、赤ちゃんの発育が順調に進んでいるかや、羊水の量が問題ないかなどの目安になります。
GBSチェック
GBSとはB群溶血性レンサ球菌という細菌のことで、妊婦さんが感染している場合、出産時に赤ちゃんにも感染する恐れがあります。
GBSチェックは腟内や肛門内を綿棒でぬぐってGBSがいるかどうかを調べる検査で、妊娠35~37週の期間に行われることが多いです(※7)。
NST
NSTとは「ノンストレステスト」の略称で、子宮に緊縮を加えない状態で赤ちゃんの心拍数を確認し、赤ちゃんが元気かどうかを調べる検査です。
妊娠期間が満42週を超えた過期妊娠や、ハイリスク妊娠(高齢妊娠や多胎妊娠、妊娠高血圧症など)の妊婦さん向けに妊娠30週前後〜出産までに行うことが一般的です(※6)。
妊婦健診(検診)の費用は?補助券が使える?
妊婦健診は健康保険が適用されないので、基本検査で約5,000~7,000円程度、血液検査などの特別な検査を行った場合は約1万~3万円の費用がかかります。
病院によって費用は異なりますが、全部で14回あった場合は大体10~20万円かかります。
ただし、母子手帳と一緒に交付される「妊婦健康診査受診票(助成券・補助券)」が使えるので、実際に負担する金額は約3〜7万円ほどであることが多いようです。
自治体によって妊婦健診の助成内容や費用は異なるので、母子手帳をもらうときに確認してみてくださいね。
妊婦健診は妊婦さんと赤ちゃんを守る大事なもの
妊婦健診は妊婦さんと赤ちゃんの健康状態をチェックし、トラブルを未然に防ぐ大切なものです。
採血や体重測定、内診など負担のかかる検査も多いですが、赤ちゃんと妊婦さん自身のためにも、きちんと定期的に受けるようにしてくださいね。
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2019改訂版)
※2 厚生労働省 妊婦健診Q&A
※3 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくり」
※4 日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」
※5 メジカルビュー社『プリンシプル 産科婦人科学2 産科編』p.407-410,434
※6 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』p.47,68,80-81,102,190,222-223
※7 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 産科編2020」