「母乳をあげているだけで痩せることができた!」という体験談を耳にしたことがあるかもしれません。これは「母乳ダイエット」とも呼ばれ、産後に手軽にできるダイエット法として実際に取り入れているママも多いようです。
今回は、母乳育児で痩せる理由や母乳ダイエットを成功させるためのコツ・食生活などをご紹介します。
母乳育児だと痩せるのはなぜ?授乳中のカロリー消費量は?
母乳育児をすると痩せる理由は、母乳を作り出すためにカロリーをたくさん消費するからです。
母乳育児中の1日あたりの母乳分泌量は平均で約780mL、母乳を100mL与えるのに消費されるカロリーは約66.3kcalです(※1)。
つまり、完全母乳育児で1日780mLを与え続けていると、1日に約520kcalを消費することになります(※1)。これは、体重50kgの人の場合、1時間30分ほどランニングをしないと消費できないカロリー量です(※2)。ただし、母乳分泌量には個人差があるため、消費カロリーは人によって違います。
母乳ダイエットをするときに気をつけることは?
産後1〜2ヶ月間はママの体の回復が最優先です。ダイエットを目的として無理して母乳を与えることはしないようにしましょう。
母乳の出方や赤ちゃんの飲み方がまだ安定しにくい時期でもあるので、ゆっくりと過ごしながら、まずは授乳に慣れることを目標にできるといいですね。
母乳ダイエットのポイントは?母乳の出が悪いときはどうしたらいい?
母乳ダイエットを成功させるには、母乳の分泌をよくして、1回の授乳でしっかりと量を出すことがポイントとなります。
でも、母乳の出が悪かったり、赤ちゃんが上手に吸えなかったりして、うまくいかないこともあるかもしれません。そういったときは、以下の方法を試してみてくださいね。
赤ちゃんが飲みやすい方法を見つける
赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激で母乳が作られて、分泌がよくなるといわれています(※3)。
赤ちゃんが無理なくおっぱいを吸えるように体位や高さを調整して、飲みやすくしてあげましょう。
混合育児から完全母乳育児へ移行したい場合は、母乳の分泌量が増えてきたら徐々にミルクの回数や量を減らし、母乳を与える回数を少しずつ増やすといいですよ。
水分をたくさんとる
母乳はママの血液から作られていて、成分のほとんどは水分です。水分が不足すると母乳が出にくくなることもあるため、こまめに水分補給をしましょう。
体を休ませる時間を作る
ストレスや疲れが溜まると、一時的に母乳の分泌が悪くなることがあるといわれています(※4)。
特に産後6ヶ月頃までは昼夜問わずの授乳やおむつ替えで寝不足になりやすいので、ほんの短い時間でも休んだり眠ったりして、体を休ませるようにしましょう。
母乳ダイエットを成功させる食生活とは?
ここでは母乳の量や質を保ちつつ、授乳中のカロリーバランスをうまく取ることができる食生活についてご紹介します。
必要なカロリー以上に食べない
厚生労働省は、授乳中は妊娠前と比べて1日あたり350kcal多く摂ることを推奨しています(※1)。
18〜49歳の成人女性の1日に必要なカロリーは、身体活動レベルが「ふつう」の場合で2,000〜2,050kcalです(※1)。そのため、身体活動レベルが「ふつう」であれば、授乳中は2,350〜2,400kcal摂取することが望ましいということになります。
しかし、必要なカロリー以上に食べてしまうと、母乳ダイエットの効果がなくなってしまいます。産後しばらくは赤ちゃんのお世話に追われて食生活が乱れがちなので、気をつけましょう。
栄養バランスのとれた食事をする
母乳ダイエットのために母乳の分泌をよくしようと、特定の食べ物を食べる、または避けるといったことを考えるかもしれません。しかし、食事と母乳の量や質の関係性については調査報告が十分にされていないのが現状です(※5)。
母乳育児中は栄養バランスのよい食事を心がけることが大切です。特に、たんぱく質やビタミン類、鉄分などは産後のママが積極的に摂りたい栄養素とされているので、しっかり摂取できるといいですね。
母乳ダイエットはママと赤ちゃんの健康を優先して
ほかのダイエット法と同じで、母乳ダイエットの効果には個人差があります。
今回ご紹介したポイントや食生活を参考にしながら、まずは「母乳を与えているうちに自然と痩せられたらラッキー」というくらいの気持ちで始めてみるといいかもしれませんね。
監修専門家:助産師 佐藤 裕子
日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助産院では、日々多くのママたちからの母乳相談や育児相談を受けています。具体的に悩みを解決でき、ここにくると安心してもらえる、そんな助産師を目指しています。
※1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」pp.82,84
※2 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」p.31
※3 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』p.369
※4 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」p.26
※5 株式会社南江堂『エビデンスをもとに答える妊産婦・授乳婦の疑問92』