子どもが発熱したとき、上がったり下がったりを繰り返すことがあります。熱をぶり返してつらそうな姿を見ていると、不安になることもありますよね。
そこで今回は、子どもの熱が上がったり下がったりするときの原因や受診の目安、かかっている可能性がある病気、対処法をご紹介します。
子どもの熱は上がったり下がったり、ぶり返しやすい?
子どもは発熱すると、上がったり下がったりしやすいという特徴があります。
通常の風邪でも熱が出ては下がって、また上がる、下がる…というのを繰り返して、3日くらいで下がりきることが多いです。
特に1~2歳くらいまでは免疫力が低いため、体が熱に抵抗しようとして一度は熱が下がりますが、そのあとぶり返して、また熱が上がることもよくあります。
また人間の体温は、日内変動といって1日の間でも少し上下していて、朝の体温は夕方より平均0.5度くらい低いといわれています(※1)。
そのため、昨夜は高くて今朝は下がったのに、夕方になったらまた熱が上がったということもよくみられます。
子どもの熱が上がったり下がったりするときの受診の目安は?
熱が上がったり下がったりしていても、発熱以外の症状がなく、水分や食事がとれて眠れていて機嫌がいいようなら心配はいりません。
しばらく様子を見て、熱が続くようであれば通常の診療時間内に受診しましょう。
ただし、発熱の他に次のような症状があるときには、速やかにかかりつけの小児科や病院を受診する必要があります。夜間や休日は救急外来を受診してください。
● 水分を受けつけず、尿が12時間出ていない
● 意識がもうろうとしている
● 声をかけたり叩いても反応しない
● 顔色が悪い
● 何度も吐く
● 呼吸の回数が多い、全身を使った呼吸をしている
● けいれんのような動きがある、けいれんが起こっている
子どもの熱が上がる・下がるを繰り返すと焦ってしまうものですが、できるだけ冷静に様子を観察して記録し、以下の内容を医師にしっかり伝えましょう。
● いつ頃から発熱を繰り返してしているか
● 上がったときの最高の体温、下がったときの体温
● 発熱以外の症状はあるか
● 水分補給はできているか
● 尿が出ているか など
発熱以外の症状がわかると原因を特定しやすく、治療がスムーズに進みますよ。
子どもの熱が上がったり下がったりするときに疑われる病気は?
子どもが発熱する原因の多くは、風邪のウイルスによるものです。体に侵入したウイルスと戦うための免疫反応として熱が出るため、発熱自体は悪いことではありません。
しかし、高熱で上がったり下がったりを繰り返す場合、よくある風邪のウイルスによるものではなく、細菌感染症やウイルス感染症など病気が原因のこともあります。
3日以上、熱が上がったり下がったりするときは、以下の病気を疑って小児科を受診してください。
マイコプラズマ肺炎
肺炎マイコプラズマという細菌が肺に感染して炎症を引き起こし、長引く咳が特徴的な病気です(※2,3)。5歳以上の子どもに多く、発熱が数日続いたあと、乾いた咳が次第に強くなる傾向があります。
特に夜間に咳がひどくなることが多く、肺炎による呼吸障害が起こるおそれもあります。
溶連菌感染症
発症すると38~40度の突然の高熱や、喉の痛み、頭痛などがあらわれます(※2,4)舌にイチゴのように赤いブツブツができることもあります。
プール熱(アデノウイルス感染症・咽頭結膜熱)
アデノウイルスに感染して発症します。39~40度の高熱と、37~38度の微熱の間を1日のうちに上下し、その状態が4~5日続くこともあります(※2,5)。
発熱以外に喉の痛み、目の充血や頭痛、吐き気、下痢の症状が出ることがあります。
川崎病
4歳以下の子どもがかかることが多い、原因不明の病気です(※6)。発熱や両目の充血、発疹、イチゴ舌、リンパ節の腫れといった症状が続きます(※7)。血管(冠動脈)に後遺症が残る可能性があり、注意が必要な病気です。
手足口病
5歳以下の子どもがかかることが多い病気で、約1/3の割合で38度以下の発熱が見られます(※2,8,9)。口や手のひら、足の裏や甲に2~3mmの水ぶくれ状の発疹ができ、基本的には数日間で自然と治ります。
インフルエンザ
多くの場合、39〜40度の急な発熱、頭痛、関節痛、倦怠感といった発症があらわれます(※2,10)。
子どもから大人まで年齢を問わず発症し、一度感染して免疫がついても、違う型が流行ったり、その免疫が落ちてきた頃に同じ型が流行ったりして、再びかかることもあります。
中耳炎
ウイルスや細菌が鼻・喉を介して耳に入り込み、発熱を起こします(※11)。耳の激しい痛みや膿みを伴うものの、小さい子どもはどこが痛いかを表現できず、不機嫌になることもあります。
子どもの熱が上がったり下がったり、ぶり返すときの対処法は?
熱が上がったり下がったりしていると、子どもは想像以上に汗をかいているので、水分補給を忘れないでください。
熱が下がっているときは比較的落ち着いているので、そのタイミングで水分補給・授乳をするとスムーズですよ。また食欲があるようなら、そのタイミングで食事をさせましょう。
一方で、熱が上がっているときは寒気を感じてぐずったり不機嫌になったりするので、厚着をさせたり掛け布団を重ねたりして環境を整え、できるだけそばにいて安心させてあげましょう。
熱が上がりきって暑そうなら薄着をさせるなど、体温調節のサポートもしてくださいね。
子どもの熱がぶり返すときは期間と元気さで見分けよう
一度は下がったと思った熱が夜間にぶり返すと心配になりますが、ほとんどは数日の間に治まるので、落ち着いて対処することが大切です。
ただし、高熱が3日以上続く、元気がなくてぐったりしている、水分を受けつけない、といったときは、夜間や休日でも受診してください。
普段 から子どもの様子をよく観察して、いざというときに適切な対応ができるようにしておくと安心ですね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
※1 日本医師会 白クマ先生の子ども診療室「発熱、体が異常に熱い」
※2 日本小児科学会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」p.11,17,22,24,28
※3 NIID国立感染症研究所「マイコプラズマ肺炎とは」
※4 NIID国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」
※5 国立感染症研究所「アデノウイルス解説ページ-アデノウイルスの種類と病気」
※6 国立成育医療研究センター「川崎病」
※7 国立循環器病研究センター「川崎病の診断と治療法」
※8 NIID国立感染症研究所「手足口病とは」
※9 厚生労働省「手足口病に関するQ&A」
※10 厚生労働省「インフルエンザQ&A」
※11 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の病気」