歯が生え始めると虫歯のことが少し気になりつつも、「赤ちゃんのうちは虫歯にはならないのでは?」と思うかもしれませんね。しかし、生えたばかりの乳歯も虫歯になる可能性があるので、しっかりとしたケアが必要になります。
今回は乳歯の虫歯について、原因や永久歯への影響、治療が必要かどうかなどをご紹介します。
乳歯とは?いつから生えるの?
乳歯とは大人の歯である「永久歯」の前に生える、乳幼児の歯のことです。
乳歯が生え始める時期には個人差がありますが、一般的に以下のような順で生え揃っていきます(※1)。
● 生後6〜8ヶ月頃:下前歯2本程度
● 生後9〜10ヶ月頃:4本程度(上下前歯2本ずつ)
● 生後10〜11ヶ月頃:6本程度(上前歯4本・下前歯2本)
● 生後12ヶ月頃:8本程度(上下前歯4本ずつ)
● 1歳~1歳3ヶ月頃:14本程度(「第一乳臼歯」と呼ばれる奥歯が生える)
● 1歳6ヶ月~2歳頃:16本程度(犬歯が生える)
● 3歳頃まで:上下20本の乳歯が生え揃う(「第二乳臼歯」が生える)
上記はあくまで目安なので、数ヶ月程度生えるのが遅かったり早かったりしても問題ありません。気になることがあったら、小児歯科などで相談してみてくださいね。
乳歯も虫歯になるの?原因は?
乳歯も永久歯と同じように虫歯になります。その原因には、「歯の質」「虫歯菌(ミュータンス菌)」「糖質(砂糖など)」などが関係していると考えられています(※2,3)。
歯の質
歯の白くツヤツヤしている部分(エナメル質)と、その下の少し黄色がかった部分(象牙質)の状態によって、虫歯になりやすい歯の質をもった赤ちゃんや子どももいます。
また、乳歯は歯の表面が粗くて汚れがつきやすいので、虫歯になりやすいです。
虫歯菌(ミュータンス菌など)
虫歯菌は、食べものや飲みものに含まれている糖分を栄養にして増えていき、白い汚れ(プラーク)を形成します。
プラークが歯の表面にくっつくと酸が作られ、この酸が歯に含まれるリンやカルシウムを溶かして歯をもろくします。
糖質(砂糖など)
砂糖や果物などに含まれる糖質は、虫歯菌が酸を作るための材料となります。
甘いお菓子やジュースなどを頻繁に口にしたり、だらだら食いをしたりしていると、口の中が虫歯の発生しやすい環境になります。
赤ちゃんの場合、哺乳瓶でイオン飲料やジュースなどを飲ませると、虫歯のリスクが高まります(※4)。
また、母乳やミルクにも糖分が含まれるため、卒乳が遅かったり夜間の授乳を続けていたりすると、虫歯が発生しやすくなります。
乳歯が白濁したり白い線がついていたりするときは?
乳歯の表面が白濁して白い線がついているのは白斑といい、虫歯になりかけている状態です(※2)。
大人の虫歯の色は茶や黒が多いのに対し、乳歯の虫歯は白くなることがあることを覚えておいてくださいね。
白い線を放っておくと茶色い線になって、穴があいてしまうこともあります。
乳歯が生えはじめたらガーゼ磨きや歯ブラシに慣れる習慣をつけて、虫歯を予防しましょう。
乳歯が虫歯になると永久歯に影響はあるの?
乳歯が虫歯になっても、いずれ抜けるので永久歯に影響がないように思うかもしれませんが、実は大いに関係しています。乳歯が生え始めたときから、しっかりケアしてあげましょう。
乳歯が虫歯になると、口の中に虫歯菌が増殖します。
乳歯は一度に生え変わるわけではなく、乳歯がいくつか残っている状態で永久歯が生え始めるので、虫歯菌が口の中にいる状態となり永久歯にも影響を与えます。
また、永久歯への影響に限らず、虫歯を気にしてしっかり噛まなかったり、左右のどちらかだけで食べたりしていると、顎が成長しにくく、噛み合わせや歯並びが悪くなることもあります。
虫歯で早く乳歯が抜けてしまうと、永久歯用のスペースがうまくとれずに歯並びに影響を与えることもあります。
乳歯が虫歯になったときは治療が必要?
「乳歯が虫歯になっているかも」と思ったら、乳歯が生えはじめたばかりであっても歯科を受診しましょう。できれば、子どもの歯を専門とした小児歯科がおすすめです。
乳歯でも虫歯が悪化していれば大人と同じような治療が必要になります。
症状によっては、虫歯ができた部分を削ったり、金属やプラスチックといった詰めものをしたり、麻酔をして治療したりするケースもあります(※5)。
初期虫歯の段階であれば、歯石のクリーニングとフッ素コーティングで虫歯の進行を止めることもできます。
虫歯でなかった場合でも、歯石の除去や虫歯予防としてフッ素塗布が行われます。
できるだけ定期的に歯科健診を受け、日頃から気になる点がないか、ママやパパが歯磨きのときに丁寧に見てあげてくださいね。
乳歯の虫歯は毎日のケアで予防しよう
乳歯の虫歯を予防するために、毎日のケアを習慣づけることが大切です。歯磨きをスムーズに進めるには、口の周りを触られることに慣れる必要があります。歯が生えはじめたら、歯磨きを楽しめる環境を作って慣れさせましょう。
できるだけ定期的に歯科健診を受け、気になることがあったら医師や歯科衛生士に相談してみてくださいね。
監修医師:歯科医師 角田 智之
1992年に明海大学卒業後、日本大学医学部歯科口腔外科にて診療に従事。久留米大学医学部口腔外科などを経て、2008年に開業。現在は福岡市博多区にて診療を行う。予防歯科や心理的要因にて発症するといわれている舌痛症を専門的に診察している。
※1 厚生労働省「子ども家庭総合評価票 記⼊のめやすと⼀覧表」
※2 日本小児歯科学会「子どもたちの口と歯の質問箱 産まれてから2歳頃まで」
※3 日本歯科医師会 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020「むし歯」
※4 厚生労働省 e-ヘルスネット「卒乳時期とむし歯の関係」
※5 日本小児歯科学会「これからの小児歯科医療と保健~8020の実践のために~」