妊娠してお腹が大きくなってくると、妊娠線(ストレッチマーク)と呼ばれる跡がお腹や胸、おしりなどに現れます。妊娠線は、一度できてしまうと完全に消えるのが難しいといわれているので、対策しておきたいですよね。
今回は、妊娠線ができる原因や、予防はいつから始めるのがいいのか、妊娠線ができてしまったときに目立たなくするための対策などをご説明します。
妊娠線とは?いつからできるの?
妊娠線とは、お腹やバスト、太もも、お尻、二の腕などにできる皮膚の断裂跡のことです。最初は赤紫色の細い筋で、時間がたつにつれて白っぽくなります。
妊娠線の発生頻度は、初産婦の42.8%、経産婦の57.4%で、その約80%が妊娠中期までに発生しているという報告があります(※1)。
一本だけできる人や十数本以上現れる人もいて、個人差があります。
一般的に、出産後は徐々に目立たなくなりますが、完全に妊娠線が消えることは難しいといわれています(※1)。
妊娠線の原因は?
妊娠線は大きく分けて以下の2つの理由でできるとされています。
ホルモンの増加
妊娠中は、ステロイド(糖質コルチコイド)というホルモンの分泌量が増えます。
ステロイドの分泌が増えることで、コラーゲンを作り出す細胞の増殖が抑えられ、肌が弾力を失ってしまいます(※1)。
皮膚の急激な伸び
妊娠するとお腹が大きくなるため、皮膚の表面(表皮)の下にある真皮という組織が急速に引っ張られます。
真皮が強く引き伸ばされると断裂してしまい、妊娠線として現れます(※2)。
妊娠線を予防するポイントは?
妊娠線を100%予防する方法はありませんが、以下の3つのポイントを押さえておくと予防につながる可能性があります。
● 肌をしっかりと保湿する
● 適切な範囲内の体重増加を目指す
● 大きくなったお腹を支えるグッズを活用する
次からは、妊娠線を予防する方法を具体的にご説明します。
妊娠中におすすめの保湿方法は?
妊娠線はさまざまな場所にできます。こまめに全身に保湿剤を塗って潤いを与えましょう。
お風呂あがりにゆったりした気持ちで体に塗ると、リラックスもできますよ。
妊娠線予防クリームやオイルなど、いろいろなタイプの保湿剤が販売されているので、自分の体質や好みに合ったものを選んでくださいね。
保湿ケアは、毎日続けることが大切です。出産を迎えるときまで無理なく続けるために、大容量の保湿剤を選んだり、お気に入りの商品を見つけたりして、楽しみながら全身のケアをしてくださいね。
妊娠中の体重増加の目安は?
日本産婦人科学会が推奨している、妊娠中の体重増加の範囲は上の表のとおりです(※3)。
妊婦さんの理想的な体重増加の目安は、妊婦さんのもともとのBMI値によって異なります。自分の体重増加の目安を出すには、まず妊娠前の体重からBMI値を算出してみてくださいね。
妊娠中の体重増加は自然なことですが、急激に増えすぎないように注意しましょう。
おすすめのお腹を支えるグッズって?
マタニティ用の腹帯やガードルは大きいお腹を支えてくれるので、お腹の皮膚に負担がかかりにくくなり、妊娠線予防にもつながる可能性があります。
クリームなどの保湿剤をたっぷりお腹に塗ったあとに腹巻きタイプの腹帯などでお腹を覆ってあげれば、保湿力がアップして冷え対策にもなりますよ。
ガードルや腹帯には以下のようにいろいろな種類があるので、季節や生活シーンにあわせて、自分に合ったものを選んでくださいね。
腹帯
保湿力が高く、ソフトなつけ心地が特徴です。伸縮性にすぐれた素材でお腹の丸みにフィットしやすいので、体のバランスを整える効果も期待できます。
ガードル
サポート力が高く、お出かけのときもしっかりお腹の重みを支えてくれるのが特徴です。仕事をしているなど、体を動かす機会の多い人におすすめです。
ガードルには、妊婦さん向けのマタニティガードルと、産後用のガードルがあります。妊娠中は、締めつけの少ないマタニティガードルのほうを使ってくださいね。
妊娠線予防はいつから始めたらいいの?
妊娠線の予防は、方法にあわせて2つの時期から始めましょう。
肌の保湿は、できれば妊娠初期から習慣にするのがおすすめです。ただし、妊娠中はホルモンバランスの変化などの影響で、肌が敏感になる妊婦さんもいます。
保湿剤はできるだけ肌に優しいものを選び、肌トラブルがあるときは無理をしないようにしましょう。
一方、腹帯やガードルをつけるのは、お腹が大きくなってくる妊娠5~6ヶ月くらいからが良いでしょう。
なかには腹帯による締めつけが苦手な人もいるので、あくまでも苦しくない範囲で実践してみてくださいね。
妊娠線ができたときの対策は?
妊娠線はできるだけ薄く目立たなくさせつつ、新しい妊娠線ができないように対策をしたいですよね。
皮膚が乾燥しているとひび割れが目立ってしまうので、妊娠線予防クリームやオイルで引き続き保湿を続け、できるだけ肌の潤いを保ちましょう。
ただし、クリームやオイルでケアできるのは皮膚の表面(表皮)だけであり、妊娠線の原因となっている真皮の断裂を完全に治すことはできません。
産後も妊娠線が薄くならず、跡が気になるようであれば、皮膚科や整形外科でレーザー治療や炭酸ガス治療などを受けるのも一つの方法です。治療を検討する場合は、病院で相談してみてくださいね。
妊娠線は早めの予防と対策が大事!
妊娠線を予防するために、しっかりと保湿をしつつ、皮膚に負担をかけないようにしましょう。日頃から無理のない範囲で予防に取り組んでみてくださいね。
監修専門家:助産師 佐藤 裕子
日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助産院では、日々多くのママたちからの母乳相談や育児相談を受けています。具体的に悩みを解決でき、ここにくると安心してもらえる、そんな助産師を目指しています。
※1 山口琴美「科学研究費助成事業研究経過報告書」
※2 清水宏『あたらしい皮膚科学 第3版』p.337
※3 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくり」