1〜2歳頃の子どものお世話で気になることの一つが、歯のケアではないでしょうか。食べられるものが増えてくるので、虫歯になるのではないかと不安になるママやパパもいますよね。
今回は、1・2歳の虫歯について、どんな特徴があるのか、治療法や予防法などをご紹介します。
1・2歳でも虫歯になるの?
1・2歳の乳歯でも、毎日のケアが不十分であれば虫歯になることがあります。虫歯は主に以下の3つの原因が関係して起こると考えられています(※1,2)。
歯の質
乳歯は歯の表面が粗くて汚れがつきやすいので、虫歯になりやすいです。
歯の白くツヤツヤしている部分(エナメル質)と、その下の少し黄色がかった部分(象牙質)の状態によって、虫歯になりやすい歯の質をもった子どももいます。
虫歯菌(ミュータンス菌など)
虫歯菌は、食べものや飲みものに含まれている糖分を栄養にして増えていき、白い汚れ(プラーク)を形成します。
プラークが歯の表面にくっつくと酸が作られて、歯に含まれるリンやカルシウムを溶かして歯をもろくします。
糖質(砂糖など)
砂糖や果物などに含まれている糖質は、虫歯菌が酸を作るための材料となります。甘いお菓子やジュースなどを頻繁に口にしたり、だらだら食いをしたりしていると、口の中が虫歯の発生しやすい環境になってしまいます。
乳歯が虫歯になると、顎の発育や永久歯の歯並び・噛み合わせに悪影響を与える可能性があるほか、虫歯で痛がると偏食や食欲低下にもつながります。さらに、乳歯の虫歯菌の影響で、永久歯が虫歯になることもあるとされています。
乳歯が生えてきたときから適切なケアをして虫歯を予防しましょう。
1・2歳の虫歯の特徴は?
1・2歳の虫歯は、永久歯の黒や茶色の虫歯とは違い、歯の生え際に白斑(はくはん)という白い線がみられるのが特徴です。
これは虫歯のなりかけで、放っておくと、黄ばんだり茶色い線になったり穴が開いたりすることもあります(※1)。
おやつや母乳、フォローアップミルクを飲ませて歯磨きをせずに眠ってしまうと、虫歯菌が繁殖しやすい状態になって虫歯ができやすくなります(※1)。
また、砂糖の摂取が多くなると虫歯菌(ミュータンス菌など)が歯の表面にくっつきやすくなります。何かを食べさせたり、飲ませたりした後は必ず歯磨きをして虫歯を予防しましょう。
1・2歳の虫歯は歯医者での治療が必要?
1・2歳の虫歯は、歯医者での治療が必要です。
初めての虫歯は、自治体が実施している歯科健診で診断されて気づくことが多いようです。
指摘された場合は、放置せずにすぐに歯医者を受診してください。できれば、子どもの歯を専門とした小児歯科がおすすめです。
治療する場合、初段階の虫歯であれば削ることはせず、高濃度のフッ化物(フッ素)を塗布して再石化を促し、虫歯の進行を抑制して歯の状態を整えます(※3)。
虫歯がある程度進行している場合は、虫歯の部分を削り、歯に詰め物をするという方法が一般的です。場合によっては麻酔を使って治療することもあります。
子どもが怖がったり暴れたりして治療が困難な場合は、歯に「サホライド」という薬を塗って、一時的に虫歯の進行を抑制します。ただし、塗布した虫歯の部分が黒くなります。
子どもが落ち着いて治療を受けられるようになれば、黒くなった部分を白い詰め物へ交換することもできますが、口を開けたら見える歯にはなるべく使いたくないと考えるママやパパもいるようです。
1・2歳で虫歯にならないための予防方法は?
1・2歳の子どもの歯は、毎日しっかりケアする習慣をつけて、まずは虫歯にならない口内環境を作ることが大切です。
以下の方法を参考に虫歯予防をしてみてくださいね。
フッ化物を歯に塗布する
フッ化物を乳歯に塗布することで、乳歯の薄くて弱いエナメル質が強化されます。1・2歳であれば、歯磨きのときにフッ化物入りのジェルやスプレータイプの歯磨き粉を使ってみてもいいでしょう。
体への影響を心配する人もいますが、歯に塗布することを目的にしていて、大量に誤用などしなければ問題ないとされています(※4)。自宅で使うのが不安な場合は、歯医者でフッ化物を塗布してもらいましょう。
歯磨き・デンタルフロス・歯間ブラシを使う
乳歯が生えたころからガーゼ磨きをして、口の周りを触られることに慣れたら、早めに歯ブラシへ移行しましょう。
まずは1本5秒くらいを基準に、1本1本しっかりと磨くことが重要です(※1)。本数が増えてきたら、歯間の汚れをケアするために、市販されている子ども用のデンタルフロスや歯間ブラシを活用しましょう。
なるべく寝かしつけでミルクや母乳を与えない
一般的に授乳だけでは虫歯の発生には大きなリスクはありません。
ただし、離乳食がはじまり砂糖を含む食品を食べるようになってから、夜間にミルクや母乳を飲んで歯みがきをしないまま寝てしまうと虫歯のリスクが高まるとされています(※5)。
頃合いをみて、寝かしつけで母乳やミルクを与えるのを徐々にやめていけるといいですね。
食後に歯磨きの習慣をつける
歯磨きに慣れない時期は朝・晩の2回で、徐々に朝・昼・夜と毎食後に歯磨きの習慣をつけましょう。夜は唾液が減ることで虫歯になりやすいので、寝る前は必ず行うようにしてくださいね。
1・2歳なら、上の前歯と前歯の間、奥歯と奥歯の間、奥歯の溝、歯と歯茎の間などが、虫歯になりやすい場所です。重点的に磨いてあげるようにしましょう。
子どもが自分で磨きたがるときは必ず近くで見守り、最後はママやパパが仕上げ磨きをしてあげてください。
甘いお菓子・飲みものを避ける
虫歯を作りにくい口内環境を保つことが大切なので、甘いお菓子やジュース、スポーツドリンクは、できるだけ控えるようにしましょう。特に哺乳瓶で与えると、前歯が虫歯になりやすいといわれています(※5)。
1・2歳頃は食事だけでは栄養が摂りきれず、「補食」としてのおやつが必要ですが、クッキーや飴などの甘いお菓子ではなく、おにぎりや芋など食事に近いものにするのがおすすめです。
定期的に歯科健診に行く
早い時期から定期的に歯科健診へ行く習慣をつけておくと良いですね。1歳児健診では歯磨き指導があるところも多いので、できる限り参加しましょう。
1・2歳くらいでできる虫歯は色が白く、痛みも自分から伝えることができないので、ママやパパが気づかないこともあります。
歯科健診では虫歯になりにくい生活習慣や日々の歯のケアについてアドバイスをもらえるので活用しましょう。
1・2歳の虫歯は早めに対処して進行を止めよう
1・2歳で虫歯になってしまった場合は、早めに処置をすることが大切です。同時に、食生活や生活習慣を見直し、悪化を防ぐとともに事前に予防することも徹底しましょう。
初めて歯医者に行くときや行くのを嫌がる場合は、なるべく機嫌が良い時間帯に予約しましょう。また、子どもに「歯を治しに行こうね」と伝えることも大切です。
1・2歳のうちは、歯医者で泣いたり暴れたりすることもあります。待合室で本を読んであげたり、お気に入りのおもちゃを持参したりして、できるだけリラックスさせてあげてくださいね。
監修医師:歯科医師 角田 智之
1992年に明海大学卒業後、日本大学医学部歯科口腔外科にて診療に従事。久留米大学医学部口腔外科などを経て、2008年に開業。現在は福岡市博多区にて診療を行う。予防歯科や心理的要因にて発症するといわれている舌痛症を専門的に診察している。
【参考文献】
※1 日本小児歯科学会「こどもたちの口と歯の質問箱 産まれてから2歳頃まで」
※2 日本歯科医師会 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020「むし歯」
※3 日本歯科医師会 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020「むし歯の治療法」
※4 厚生労働省「フッ化物洗口ガイドラインについて」
※5 厚生労働省 e-ヘルスネット「卒乳時期とむし歯の関係」