妊娠をすると新しい命に喜びを感じると同時に、体調などの変化にストレスを感じてしまうことも。妊婦さんにどのような不安や心配事が起きやすいのかを知っておくと心構えができますよ。
そこで今回は、妊娠初期に起こりやすい不安や心配事についてや、それらを乗り越える方法などについてご紹介します。
妊娠初期の不安や心配事って?
妊娠初期は、腹部になんとなく違和感があったり、高温期が続くことで熱っぽさを感じてぼーっとしたり、人によって様々な体の変化を感じ始めます。
妊娠したことがわかっていても、妊娠初期は流産のリスクが高く、妊娠による体の変化で辛さを感じるなど、不安を感じやすい時期といえます。
以下に妊娠初期に起きやすい不安や心配事をまとめました。
体の変化に関する不安や心配事
流産
妊娠初期にどうしても気になるのが「流産」。しかし、妊娠12週未満の早期流産は、受精卵の染色体異常など赤ちゃん側の問題が原因であることがほとんどで、妊婦さんが努力して防げることではありません(※1)。
流産のサインとしては、お腹の張りや腹痛・出血などの症状があります。そういった兆候や、気になる変化があればすぐにかかりつけの産婦人科に相談しましょう。
出血
妊娠初期の少量の出血は、着床出血などの心配のいらないものが多いですが、出血の量や回数が多かったり、数日続くようであればかかりつけの産婦人科を受診しましょう。
腹痛や胃痛
つわりで規則正しい食事ができないことや、ホルモンバランスの乱れから自律神経の機能が低下すると、過剰に胃酸が分泌されることがあります。
また妊娠への不安がストレスになって胃痛になることも。痛みがひどい場合は、医療機関を受診して医師に診察してもらいましょう。
つわり
つわりがひどくて食事ができないと、赤ちゃんの成長が不安になりますが、妊娠初期の段階では胎児は母体に蓄えられた栄養で育つことができます(※1)。
自身の体調を最優先して、食べられるものを食べられるときに食べるようにしてくださいね。
高齢出産によるリスク
35歳以上で初産だとつい心配になりますが、妊娠中の様々なリスクは若くてもゼロではありません。高齢出産でも健康に妊娠期間を過ごして無事出産する人は多いですよ。心配しすぎず、ゆったりとした気持ちで過ごすことを心がけましょう。
ただし、合併症の予防や体力づくりといった面では備えることも必要です。体に変化があった場合は早めに気づけるよう普段から意識しておきたいですね。
服用や飲食に関する不安・心配事
薬
妊娠がわかった時点で、自己判断で市販薬を使用するのはやめましょう。妊娠に気づかず薬を飲んでしまったときは、念のため医師に相談しておくと安心です。
どんな医療機関を受診するときも、医師に妊娠していることを伝えてください。市販薬やサプリメントに関しても、妊娠中に服用できる商品かどうかを購入前に医師や薬剤師に確認しておきましょう。
食べもの
鉄分やビタミン、葉酸など、妊娠中に不足しやすい栄養素は意識して摂ることが大切です。
また、生ものや一部の魚など妊娠中に控えた方が良い、あるいは量に気をつけたい食べ物もあります。関連記事も合わせて参考にしてください。
飲酒・タバコ
アルコールを過度に摂取すると、胎児アルコール症候群や、発育に関する弊害を引き起こす恐れがあるので、妊娠が分かったらお酒を飲まないようにしましょう。
また、タバコは胎盤機能不全や発育の遅延につながる可能性を高めてしまうので、すぐに禁煙しましょう。また、家族にも禁煙してもらうなど受動喫煙にも気をつけてください(※2)。
カフェイン
妊娠中にカフェインを摂り過ぎると、胎児の発育に影響が及ぶ可能性が指摘されています。そこで内閣府の食品安全委員会は、カフェイン摂取量をゼロにする必要はないものの、妊娠中はいつも以上にカフェインの摂り過ぎに気をつけるように注意喚起をしています(※3)。
日本では1日に摂取できる基準量が設定されていませんが、日常的にカフェインを摂取するのは控え、できるだけカフェインレスの飲み物を選ぶ方が良いでしょう。
行動に関する不安・心配事
仕事
妊娠の経過が順調で体調が良ければ、妊娠中に仕事を続けても問題ありません。ただし重いものを運ぶ、長時間立ち続けるなど、無理は禁物です。
安定期に入るまでは会社に報告しづらいかもしれませんが、直属の上司や同じチームのメンバーだけには早めに伝えておくことをおすすめします。
仕事の割り振りがしやすい状態にしておくと、自分にとっても周りにとっても負担が減りますよ。
パーマ・ヘアカラー
毛髪や頭皮から吸収された美容剤によって、母体や胎児の健康に影響が出たという報告は出ていません。ただし、ホルモンバランスなどの影響で肌が敏感になっていることもあり、美容剤が染みたり、頭皮がかぶれたりする可能性はあります。
また、つわりがあると美容剤の匂いで気持ち悪くなることもあります。美容院へ行くときは予約時に妊娠していることを伝えて、短時間で済むメニューを選びましょう。体調が悪いときは日程を変更してもらってください。
妊娠初期の不安や心配事を解消する方法は?
一度何かを不安に感じたら、あれもこれも…となってしまいがち。それではかえって体調を崩してしまいますし、精神的にもつらいですよね。
以下のようなことを意識して、少しでも前向きに妊娠初期を過ごせるといいですね。
リラックスして過ごす
妊娠中はホルモンバランスが大きく変化するため、どうしても落ち込んだりイライラしたりしがちです。ついネガティブな考えになってしまうこともありますが、気分転換をしながらリラックスすることを心がけましょう。
前向きに明るく過ごす
妊娠中は体調が不安定なだけに、不安を感じやすくなるものです。それを受け止めたうえで、できるだけ好きなことや楽しいことをするようにしましょう。
好きな音楽を聞いたり、食べやすいものを口にしたり、楽な服装をしたりと、窮屈に感じない工夫をしましょう。
一人で抱え込まない
ひとりで抱え込まず、パートナーや友人に悩みを話してみましょう。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になります。
自治体の母親学級などで同じくらいの妊娠週数の妊婦さんと、悩みや不安を分かち合うのも心が軽くなりますよ。
情報に振り回されない
不安なときはインターネットや雑誌で色々と調べたくなりますよね。しかし、なかには過度に妊婦さんの不安を煽るような情報も存在します。
これらに振り回されないように、情報はうまく取捨選択して活用しましょう。
妊娠初期に不安や心配事を感じるのは自然なこと
誰でも未体験のことは不安になるもの。特に初めての妊娠であれば、ちょっとしたことでも気になってしまうのはむしろ自然なことです。
「妊娠するとこんなこともあるんだ」というように、赤ちゃんが生まれてくるまでの貴重な時間をかみしめながら、ゆったりとした気持ちで過ごしてくださいね。
監修専門家:助産師 佐藤 裕子
日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助産院では、日々多くのママたちからの母乳相談や育児相談を受けています。具体的に悩みを解決でき、ここにくると安心してもらえる、そんな助産師を目指しています。
※1 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』pp.87,91
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット『女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響』
※3 農林水産省『カフェインの過剰摂取について』