妊婦は静脈瘤になりやすい?妊娠中の血栓を予防する方法はある?

ふくらはぎや太ももの静脈が盛り上がっていたら「静脈瘤」かもしれません。静脈瘤は妊娠中に現れやすいトラブルですが、いったいどんなものなのでしょうか。

そこで今回は、妊娠中に静脈瘤ができやすい原因や症状、産後への影響、予防する方法などをご説明します。

静脈瘤(じょうみゃくりゅう)とは?

静脈瘤とは、静脈が瘤(こぶ)のようにボコボコと膨らんだ状態をいいます。

静脈には血液が逆流しないように弁がついていますが、なんらかの原因で弁が正しく閉じなくなると、血管が瘤状に盛り上がり静脈瘤になります。

静脈瘤は血管であればどこにでも起こりうるものですが、妊娠中は特に下半身に起こりやすく、足にできるものは「下肢静脈瘤」、肛門付近にできるものは「陰部静脈瘤」と呼ばれます。

妊婦が静脈瘤になりやすい原因は?

妊娠中は、お腹が大きくなることで骨盤内の臓器に負担がかかり、下半身の血液が滞りがちになります(※1)。

また、ホルモンの影響でむくみやすくなったり、血管の壁がやわらかくなったりすることで、静脈瘤ができやすくなります。

一般的に静脈瘤はお腹が大きくなってくる妊娠中期以降に起こりやすいですが、体質によっては妊娠初期に起こることもあります。

妊娠中の静脈瘤で現れる症状は?

妊娠中は下半身の血管であればどこにでも現れる可能性があります。人によって会陰や腟の中にできることもあります。

静脈瘤はただ瘤のようなものができるだけではなく、以下のような症状も現れます。

● 重苦しさ
● 圧迫感
● 灼熱感
● 痛み
● むくみ
● だるさ

悪化すると、足をつったような痛みがでたり、潰瘍ができたりしてつらくなることも。炎症を起こしてしまうと、分娩のときに破裂して大出血を起こすおそれもあります。

違和感があるときは静脈瘤を疑って対処することが大切です。

静脈瘤で血栓ができることもあるの?

静脈瘤自体は良性の病気ですが、体の奥にある静脈の血流が悪くなっていると血栓ができることがあります。

ごくまれですが、血栓によって足が腫れる「深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)」や、肺の動脈を塞いで呼吸困難などを引き起こす「肺塞栓症」が起こる場合があります。

どちらも早めに対処が必要なので、足が腫れてきた、急に息切れがするなど気になる症状があれば、すぐに医師に相談してくださいね。

妊娠中の静脈瘤は治療が必要?産後には治るの?

妊娠中にできた静脈瘤は、出産後には改善するケースが多いようです。自然に治まることもあるので、症状によっては、妊娠中に積極的な治療を行わない場合もあります。

しかし、静脈瘤が悪化すると体に悪影響をもたらすおそれがあり、様子を見ながら治療が必要になることもあります。

基本的には日常生活の中で静脈瘤を悪化させないように気をつけながら、医療用の着圧ストッキングなどで圧迫して血液の流れをサポートする方法がとられます。

静脈瘤がひどいときには手術をするケースもありますが、妊娠中は対症療法で様子を見ながら、出産後に手術するのが一般的です。

産後に症状が改善しないケース場合は、様子を見ながら治療法を検討することになります。

妊婦が静脈瘤を予防するためには?

妊娠中の静脈瘤を予防するには、下半身の血行をよくすることです。そのためには、以下のような方法で体を冷やさないようにして、血流をよくしましょう。

衣服に気を配る

● 体を締め付ける服を避け、ゆったりしたものを選ぶ
● 下半身の血行改善のために弾性ストッキングをはく

体を動かす

● 散歩やウォーキングなどの軽めの運動をする
● マタニティヨガやマタニティスイミングで体を動かす
● 空いた時間にストレッチをする

日常生活で気をつける

● 長時間立ったままは避けて、座ったり横になったりして足の血流を良くする
● 休憩するときは足をあげる
● 寝るときは足元にバスタオルなどを敷いて足を高くする

体を冷やさない

● 毎日湯船に浸かって体を温める
● 暖かい靴下を履く

妊娠中は血流を意識しよう

日々の服装に注意して、運動もするなどで血行改善をすることは静脈瘤の改善だけではなく、妊娠生活を健康的に過ごすためにも大切なことです。静脈瘤は誰にでも起こる可能性があるので、妊娠中の生活には注意してくださいね。

監修医師:産婦人科医 藤東 淳也

産婦人科医 藤東淳也先生
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。

※1 メジカルビュー社「プリンシプル 産科婦人科学2 産科編」p.207

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