母乳を飲ませることは赤ちゃんに栄養を与えるだけでなく、ママの産後の体重管理や子宮の回復にも効果が期待できるといわれています。ただ、「母乳が出ない」「赤ちゃんが飲んでくれない」など悩むママは多いですよね。
そこで今回は、母乳に関する悩みの解決法を5個ご紹介します。
母乳が出る仕組みとは?
そもそも母乳はどのような仕組みで出るものなのでしょうか。
母乳はママの血液から作られています。妊娠するとエストロゲンという女性ホルモンが増加し、乳腺が発達していきます(※1)。しかしエストロゲンには、母乳の分泌を抑える作用もあり、出産前に母乳が出ることはほぼありません。
出産すると、エストロゲンの分泌が少なくなり、今度は母乳を作って分泌させるプロラクチンとオキシトシンというホルモンが分泌されます(※1)。
さらに、赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によってホルモンの分泌が増えて、より母乳の分泌がよくなるといわれています(※1)。
この仕組みを理解したうえで、どのようにすれば母乳の出がよくなったり、赤ちゃんがたくさん飲んでくれたりするようになるのか、次からその方法をご説明します。
母乳育児の成功のコツ1. 水分をたくさんとる
母乳は血液から作られていて、成分のほとんどは水分です。水分が不足すると母乳が出にくくなることもあるため、こまめな水分補給が大切です。
個人差はありますが、母乳育児中の1日あたりの母乳分泌量は平均で約780mLです(※2)。
体質や運動量、季節などによって1日に必要となる水分量は変わりますが、母乳育児中は、妊娠中や妊娠前より水分を多めに摂ることを意識するといいでしょう。
特に、それまで普段あまり水分を摂っていなかったママは、意識的に飲む量を増やすようにしてくださいね。授乳のたびにこまめに飲むことをおすすめします。
母乳育児の成功のコツ2. 休息・睡眠をとる
疲れやストレスによって、母乳の分泌が一時的に悪くなることがあるといわれています(※3)。
特に産後しばらくは、出産による身体のダメージに加え、昼夜問わずの授乳やおむつ替えで寝不足になって疲れやストレスが溜まりやすいです。
赤ちゃんが昼寝をしているときに一緒に横になるなど、ほんの少しの時間でも体を休ませるように意識してくださいね。
母乳育児の成功のコツ3. 血行をよくする
母乳はママの血液からできているので、血行が悪くなると母乳が出にくくなることがあります。
いつも同じ姿勢で授乳をしていると、体が凝り固まって血の巡りが悪くなりやすいので、肩回しをしたり伸びをしたりと体をほぐしてから授乳を始めるのもおすすめです。
1ヶ月健診で湯船に入ってもいいと許可が出たら、ゆっくりお風呂に入る時間を作って、湯船に浸かり血行をよくするのもいいですね。ただし、おっぱいが強く張ったり痛かったりするときは、湯船に入るのは控えましょう。
母乳育児の成功のコツ4. 栄養バランスの良い食べ物をとる
母乳育児中は栄養バランスのよい食事を心がけることが大切です。授乳中は1日に妊娠していない状態より+350kcalほどのエネルギーが必要とされています(※2)。
主食・主菜・副菜を上手に組み合わせ、特にたんぱく質やビタミン類、鉄分など産後のママが積極的に摂りたい栄養素をしっかり摂取できるといいですね。
母乳育児の成功のコツ5. 搾乳して母乳量を一定に保つ
母乳の出をよくするためには、授乳して乳頭に刺激を与えること、1回の授乳でしっかり飲ませることがポイントとなります。
しかし、赤ちゃんの吸う力が弱い、一度にたくさんの量を飲めない、という場合もあります。
授乳時間が長くあいて赤ちゃんに直接飲ませることができない、赤ちゃんが母乳を飲み切れず授乳後もおっぱいの張りが強いといった場合は、搾乳をするのもひとつの方法です。
搾乳によって母乳を出し切ることで、体は出した分の母乳を作り出そうとし、母乳の分泌量が増えることにつながりますよ。
母乳育児を成功させなくてはと思いつめすぎないで
母乳の出方や量には個人差があるため、母乳育児がうまくいかなくても、焦ったり思いつめたりしすぎないようにしましょう。
今回ご紹介した方法を試しながら、気になることがあるときは出産した病院や住んでいる地域にある母乳外来で相談してみてくださいね。
監修専門家:助産師 佐藤 裕子
日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助産院では、日々多くのママたちからの母乳相談や育児相談を受けています。具体的に悩みを解決でき、ここにくると安心してもらえる、そんな助産師を目指しています。
※1 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』pp.36,368-369
※2 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」p.82
※3 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」p.26