退職エントリー、のような謝辞

2023.01.23

西山 修
エンジニア

2022年12月31日をもって8年半在籍したエバーセンスを退職した西山です。
退職エントリーなるものを、退職したその組織のメンバーブログに書いています。しかも今日は2023年1月23日はエバーセンス設立からちょうど10年となる節目の日に。

この10年間のうち8年半をここで過ごさせてもらい、この組織のいろいろな移り変わりを見てきました。ここにそれらの要点を書き記せるほどの文才は私にはありませんが、先日さかっちさんに背中を押されたこともあって、謝辞か何かくらいには出来るかもしれないと思い、厚かましくも振り返りながら退職のことなど書いてみようかと思います。

入社を決めたのは、「牧野さんの想い」でした

私とエバーセンスの出会いは、Wantedlyの募集を見たところから始まりました。後々に聞いた話ですが、Wantedlyの無料枠で応募を受け取れる最後の1人だったようで、無駄なコストを1円もかけられないマンション一室時代のエバーセンスは、タダでエンジニアを獲得出来たと喜んでいたそうです(笑)。

そうして無料で獲得できたエンジニア(私)は2期目からジョインしたわけですが、入社するやいなや、創業から一緒だった取締役2名がいなくなり、他のメンバーも辞め、事業(絵本アプリPIBO)も全く伸びていませんでした。入社後、私はデータベースにアクセスして、PIBOの有料サブスク会員数を調べてみたのです。あのときは目を疑いました。当時わずか120人程度しか課金していなかったのです。決済手数料や絵本作家さんとのレベニューシェアなどで、あの頃のプロダクト月収はわずか1.8万円くらいだったと思います。

私は妻と幼い子供も居て、転職を決意するつい1ヶ月前に住宅を購入し35年ローンを組んだばかりでした。そんな状況で皆さんは売上1.8万円の会社に転職しようと思いますか?振り返ってみても、私の調査不足は否めません...どうかしてましたね(もちろん妻にも話せませんでした)。なぜにそんな状況で入社を決めてしまったのか、、、それはひとえに牧野さんの思想に強く共感してしまったからに違いありません。

「一人ひとりがごきげんに働ける会社を作りたいんです」

私もそんな会社がこの世に存在するなら働いてみたい、シンプルにそう思ったのです。

入社してからも、牧野さんがなぜそういう会社を作りたいという思いに至ったか、幼少期の頃に抱えていた反骨心、社会で働き始めてからの違和感などたくさんの話を聞きました。私も20代のころ、社会に居場所を無くし苦しんだ時期があり、社会が悪いのか私が悪いのかと悩み、いつしか「社会で働くこと=辛く厳しいもの」と構えてかかるほうが楽になっていました。それが「ごきげんに働くとか考えてもいいよね」と言われた時、鍵をかけて牢獄に閉じ込めていた気持ちに許しを得たようなセンセーショナルな衝撃が走ったことを今でも覚えています。

もがきながら、ごきげんな組織を。

私がマネージャーになり組織運営に携わるようになってからも、その思想を実現するために、いかに組織を作っていくかという議論を本当にたくさんしてきました。本当にたくさんです。これが上場を目指すような組織であれば、無理だったと思います。ごきげんとか言う前に売上作れ、仕事しろが当たり前ですから。この会社は「ご機嫌に活き活きと、いいサービスを届ける」が最上段にあって、そのための売上であり、そのための組織体なのです。

当時牧野さんとSlackでやり取りしていた一部が古いメモに残っていました。

2016年5月2日 makinotetsuya
ご機嫌に生きるためには、自分で人生を描く必要があって、それを会社としてサポートすることが大切。
(中略)
キャリアパスを会社が決めた方が組織運営上は簡単だし、個人もそこに当てはめて考えればいいのである意味楽なのですが、それに合わなくなったら不満が溜まったり辞めるしかなくなる。それは嫌だなぁと。あくまでエバセンは個人の自律と選択を重視していきたいので、こういうことを考えていますねー。

私や他のマネージャーたちは、牧野さんとこういう話を何度も何度も重ねてきました。こう聞くとさぞかし素晴らしいキラキラした組織のように思えるかもしれませんが、一人ひとりがご機嫌じゃないようなこともたくさんあったように思います。私自身のマネジメントを振り返ってみても、ひどくチームを疲弊させてしまったり、信頼できずに余計なことを言ってしまったり、引き上げるつもりで傷つけてしまったり、今思い出しても後悔するようなことの連続でした。どのようなコミュニティでも、人間関係、上下関係、利害関係などは当たり前に複雑でいつだって課題はあって、これほど取り組んでいるエバーセンスでさえ、常にもがいているのが現実だと思っています。

ただ、このエバーセンスはそれを諦めることなく、ごきげんな組織を追求し続け、どのように新しい価値観を社会に広げていくかに向き合い続けた10年間だったのだろうと、私は思うのです。

話をいまに戻します。

私は2022年末をもってエバーセンスから離れることになりました。転職ではなく、正確には転籍という形で。

2年前、エバーセンスと三井物産はジョイントベンチャーの株式会社ノーススターを設立し、私を含めた3名がエバーセンスから出向する形でノーススター社に携わってきました。私はノーススター社に関わる中で、またエバーセンスとも違うダイナミズムを感じ、そして新しい素晴らしい仲間に出会い、ユーザーからの嬉しい言葉や厳しい指摘をもらいながら、違う環境でチャレンジ出来る喜びを感じるようになりました。出向した他の2人も同じ想いを持っているのではと思います。

そしていまノーススター社で働いていると、新たにジョインしてくれたメンバーたちが、どうやらごきげんそうに働いているのです。私はそれを見ていることが本当にたまらないのです。それがたとえ、つかの間の出来事だったとしても、本当にたまらないのです。

「いい仲間と、いい仕事を」

創業当初から言っていた牧野さんの口癖です。私はいま42歳ですが、「今」になってこの言葉の尊さを誰よりも深く共感と理解をしている自信があります。誰よりもです。

また新しい組織で課題は生まれてくると思いますが、一人ひとりのご機嫌に向き合い、いいサービスを作り続ける以外に道は無いのだと、腹をくくるしかありません。なぜなら私もまた「一人ひとりがごきげんに働ける会社を目指したい」と思ってしまったのですから。

8年半、大変お世話になりました。牧野さんだけでなく、関わった多くの人からたくさんのことを学ばさせてもらいました。巣立っていった仲間も、いまもエバーセンスで頑張っている仲間も、本当に感謝してもし尽くしきれません。ありがとうございました。

これからもエバーセンス社の益々の繁栄をお祈りしています。